U.S. Citizenship and Immigration Services(USCIS)は、2026年3月31日、FY2027のH-1Bビザ抽選が年間上限(通常枠65,000件+高度学位枠20,000件)に達したことを公表しました。

今回の抽選は、新ルールの下で初めて実施されたH-1B選考として注目されており、その結果は企業の採用傾向に大きな変化をもたらしています。

<スケジュールと基本事項>

  • 抽選当選者のみが正式申請(H-1B petition)可能
  • 申請期間:2026年4月~6月30日
  • 就労開始日:2026年10月1日以降

※抽選当選はあくまで「申請資格」であり、USCISの承認後に初めてH-1Bステータスを取得できます。

制度改正のポイント①:抽選は「運」より「賃金・スキル」重視へ

FY2027から、従来の完全ランダム抽選は見直され、賃金水準に応じたウェイト付き抽選制度が導入されました。ホワイトハウスは、今後の改革として、低賃金層より高賃金層を優先するH-1B lottery rulemakingを明示しています。これは、企業に対して「誰でも出す」のではなく、本当に投資すべき人材を絞って申請する方向を促すものといえます。

  • 高賃金(Prevailing Wage上位)ほど当選確率が上昇
  • 低賃金ポジションは相対的に不利
  • 高スキル・高付加価値人材の選抜を強化

制度改正のポイント②:審査の強化

制度変更に伴い、審査基準も高度化しています。今後は、ポジションの内容・必要スキル・提示賃金のバランスについて、より丁寧な説明が求められると見てよいでしょう。

<基本審査項目(従来から継続)>

  • 専門職(specialty occupation)該当性
  • 学位・資格要件

<新たな強化ポイント:賃金の整合性>

  • Form I-129で賃金情報の詳細記載が必要
  • Labor Condition Application (LCA)との整合性を厳格に審査
  • 賃金決定根拠のエビデンス提出要求

賃金規制およびコストの上昇

U.S. Department of Labor(DOL)は、Prevailing Wage引き上げを提案しており、

  • 外国人労働者の最低賃金上昇
  • 若手・初級人材の採用コスト増加
  • 高給与職種への誘導

が進む見込みです。

さらに、一部新規申請に追加10万ドル費用が発生するため、延長・転職は原則対象外だが、新規採用コストは大幅増加する見込みです。

企業の反応:申請数減少と選別の強化

制度変更は企業の採用戦略に影響しています。

Business InsiderがDOLデータをもとに報じたところでは、Walmartの認定済みH-1B申請は約312件となり、前年の約860件から50%超減少し、2年前比でも約40%減少しています。また、Amazonも前年同期比でおよそ3割減となっており、Google、Meta、Microsoftでも減少傾向が報じられています。 

背景には、以下の複数の要因があり、「量から質へ」の人材投資への転換がみられます。

  • 賃金連動型抽選による選別強化
  • ビザコストの大幅増加
  • 審査厳格化によるリスク増大
  • 制度の不確実性
  • 企業のROI重視・スリム化志向
  • AI等による人材需要構造の変化

在米日系企業が見直したい3つの視点

H1-B制度のスポンサーとなっている在米日系企業に求められるのは、単なる制度改定への対応ではなく、採用・報酬・配置を含めた人材戦略の再設計です。

例えば、以下のような視点が重要になるでしょう。

  1. H-1Bを「どの人材に使うべきか」という選定基準は明確か
    高コスト化・選別強化が進む中で、全候補者に同じように使う時代ではなくなっています。事業へのインパクトが大きい職種・人材に絞る視点が必要です。
  2. ビザコストを含めた採用ROIをどのように評価するか
    新規petitionでは10万ドル費用の影響が大きく、給与水準も上昇方向です。採用判断は、年収だけでなく、ビザ関連費用や審査対応負荷も含めた総コストで見る必要があります。
  3. H-1B以外の選択肢は十分検討されているか
    配置転換、他ビザ、現地採用の設計見直しなど、代替手段も含めた検討が重要です。制度の不確実性が高い今、選択肢を複線化しておくことがリスク管理になります。

H-1Bは今後、必要に応じて使う制度というより、限られたリソースとして戦略的に使う制度へと位置づけが変わっていきそうです。今回の制度改正は、単なるビザ実務の変更ではなく、採用モデル・報酬設計・人材投資の考え方そのものを見直す契機といえるでしょう。今後の制度動向も踏まえながら、「どの人材に、どの手段で投資するか」を再定義することが、企業の競争力維持につながります。

<参考>
USCIS Completes H-1B Lottery
https://www.shrm.org/topics-tools/news/talent-acquisition/uscis-completes-h-1b-lottery

How the White House’s $100,000 H-1B visa fee is impacting America’s ability to attract global talent
https://www.cbsnews.com/news/trump-administration-100000-dollar-h-1b-visa-fee-impacting-u-s-ability-to-attract-global-talent

Walmart’s H-1B filings fell by more than half in the wake of Trump’s visa shake-up
https://www.businessinsider.com/walmart-h1b-filings-down-sharply-q1-2025-2026-4