トランプ大統領は9月、外国人労働者向けのH-1Bビザ申請に対し、新たに10万ドルの手数料を課すことを決めました。発表当初は「すべての新規申請者が対象」とされていましたが、米国市民権・移民局(USCIS)が10月下旬に公式サイトで発表した内容によると、適用対象が限定されることが明確になりました。
10万ドルの手数料が必要となるケース
USCIS発表によると、以下の「新規のH-1B申請」に適用されます。
- 9月21日以降に申請されるH-1Bビザのうち、米国外に居住する新規申請者
- 米国内にいても「領事通知」などを伴う新規申請者
一方で、F-1学生ビザなど、他ビザからH-1Bへ「ステータス変更(Change of Status)」する場合は対象外となり、すでに米国内で働く外国人や留学生は影響を受けません。これは、米国内での採用・育成を行う企業にとって朗報といえます。
制度の背景と企業への影響
この新制度の背景には、「H-1Bビザの乱用を防ぎ、米国人の雇用機会を守る」という政権の方針があります。しかし、経済専門家の間では意見が分かれています。短期的には、ITなど専門職の採用コストが上昇し、米国人の雇用が増える可能性もありますが、一方で、H-1B労働者が企業の成長を後押ししているとの調査結果もあり、企業活動への影響は一様ではありません。
なお、米国商工会議所(U.S. Chamber of Commerce)や医療団体などが、今回の手数料を「不当な制限」として提訴しており、今後の法的判断にも注目が集まっています。
企業がとるべき対応は?
企業としては、まずは自社の派遣・駐在・現地採用スキームがこの新ルールの対象になるかを確認し、必要に応じてビザ戦略の見直しを早急に進めることが求められます。
例えば、米ウォルマートはこの追加費用を受け、H-1Bが必要な候補者の採用を一時停止しました。こうした動きは、海外人材を活用している日系企業にも広がる可能性があります。
代替手段としてJ-1ビザが再び注目
これまで多くの企業が利用してきた H-1Bの代わりに、J-1(交換訪問者ビザ) が、研修や人材育成を目的とした柔軟な選択肢として再び注目されています。
J-1ビザ(交換訪問者プログラム)は、研修・研究・専門技能交流を目的とした制度です。「雇用」ではなく 研修・文化交流 を目的とした制度のため、以下のような形で利用できます。
- インターン(学生・新卒者)
- トレーニー(社会人研修)
- スペシャリスト(専門分野の短期派遣)
費用もH-1Bより低く、1~18か月など柔軟な滞在期間設定が可能なため、以下のようなケースに適しています。
- 米国での育成研修
- 海外拠点間の人材交流
- 研究・技術分野での短期プロジェクト派遣
H-1Bの高額化により、米国での外国人採用環境は確実に変化しています。J-1をはじめとする柔軟な制度を戦略的に活用し、グローバル人材を長期的に育てていく視点が、これからの企業競争力を左右するでしょう。
<参考>
Compliance News: Employers with H-1B Visas Face $100,000 Fee
https://www.shrm.org/topics-tools/employment-law-compliance/compliance-news-employers-with-h-1b-visas-face-100000-fee
Walmart halts job offers for H-1B visa candidates
https://www.bbc.com/news/articles/cnvez5v3ee7o
USCIS clarifies who must pay $100,000 fee for H-1B visas
https://www.cbsnews.com/news/100000-h-1b-visa-fee-who-pays/
American Workers Will Pay the Price for New H-1B Visa Fees
https://time.com/7327602/trump-h1b-visa-fees/
H-1B vs. J-1 Visa: Choosing the Right Option for You
https://www.shrm.org/enterprise-solutions/insights/h-1b-vs-j-1-visa-choosing-right-option-you


