これまでシリーズで配信しています「DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」。日本でも企業や自治体を中心に取り組みが広がっていますが、そもそもこの考え方、アメリカでのと同じものなのでしょうか?
実は、文化や社会構造の違いから、日本とアメリカのDEIには、大きな差があるのです。
アメリカのDEIは「公民権運動」から始まった
アメリカのDEIの原点は、1964年の「公民権法(The U.S. Civil Rights Act of 1964)」にあります。人種や性別などによる差別を禁じたこの法律を皮切りに、「アファーマティブ・アクション」など、歴史的に不利な立場に置かれてきた人々への支援が本格化しました。
1970年代以降、対象は性別、宗教、民族、LGBTQ+、障害者へと広がり、1990年代には、企業内に「多様性担当責任者(Chief Diversity Officer)」などの役職が登場します。企業レベルでの本格的なDEI施策が進みました。
さらに2000年代以降は、
- 無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)
- 文化的知性(CQ)
- 心理的安全性
- アライシップ(支援者としての連帯)
といったテーマも重視され、
アメリカでは、法的強制力と市場の圧力を背景に、「結果の平等」まで踏み込む構造的・実践的なDEIが進んでいるのが特徴です。
日本のDEIは「均質な社会」からの脱却を目指す
一方、日本のDEIは戦前に設立された「水平社」などがルーツと言われています。
戦後は、
- 1960年代「身体障害者雇用促進法」
- 1979年「女子差別撤廃条約」
- 1985年「男女雇用機会均等法」
- 1999年「男女共同参画社会基本法」
など、少しずつ法整備が進み、
女性活躍や男性の育児参加推進へとつながっていきました。
2000年代以降は、「ワークライフバランス」や「働き方改革」といったキーワードとともに、DEIは企業の成長戦略や生産性向上の一環として位置づけられるようになりました。
しかし、日本ではDEIはまだ発展途上です。法的な強制力は弱く、取り組みの多くが「企業の自主性」に委ねられています。また、「多様性」よりも「均質性」が文化的に重視される傾向が強いといった課題もあり、アメリカのような「結果の平等」ではなく、「機会の平等」にとどまっているというのが現状です。
文化が違うからこそ、目指すDEIも違っていていい
アメリカ型のDEIをそのまま日本に持ち込むのは、必ずしも最適ではありません。日本には日本独自の職場文化や価値観があるからです。
だからこそ、
「なぜDEIに取り組むのか?」
「どんな未来をつくりたいのか?」
を一人ひとりが考えながら、日本らしいDEIの形を育てていくことが大切でしょう。
あなたの職場では、どんな“多様性”が尊重されていますか?
日本とアメリカのDEIの違いを理解した上で、貴社のDEIの取り組みが、現地の社会や価値観にきちんと寄り添っているか、今一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
<参考>
The Little Known History Of DEI And Why It’s Critical To Its Survival
https://www.forbes.com/sites/juliekratz/2024/12/29/history-of-dei-why-it-matters-for-the-future/
「ダイバーシティ&インクルージョン」はどう生まれたのか?その歴史を振り返る
https://diamond.jp/articles/-/240343?page=2
日本が本気でDE&Iを推進するときがきた
https://www.dlri.co.jp/report/ld/327196.html
多様性などの実現 米で見直しも 日本企業は“重視する姿勢”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250116/k10014695281000.html


