2026年も、早くも年末レビューの時期が近づいてきました。
多くの企業では、目標達成度を振り返り、上司が部下を評価し、その結果を昇給やボーナス、昇進などに反映する時期を迎えます。
このタイミングで、マネージャーや経営層が一度考えてみたいのは、こんなことではないでしょうか。
・今年の評価制度は、本当にうまく機能していたのか
・従業員は、会社が期待する成果を十分に発揮できていたのか
・従業員自身も、自らの成長を実感できていたのか
・評価制度は事業成果や従業員にとって意味があるのか
これらの問いに、自信をもって「Yes」と答えられる企業は、決して多くないかもしれません。
実際、海外でも従来型の評価制度に対する疑問が高まっています。
Gallupの調査では、Fortune 500企業のCHROのうち、自社のパフォーマンスマネジメントの仕組みが「従業員の改善を促している」と強く回答したのは、わずか2%でした。
さらにDeloitteの2025年の調査では、マネージャーの61%、従業員の72%が、自社のパフォーマンスマネジメントのプロセスを信頼しているとは言えないと回答しています。
ここまでくると、ある疑問が浮かびます。
そもそも、評価制度は本当に必要なのでしょうか?
それでも、評価は必要
結論から言えば、評価する仕組みそのものは必要です。
報酬配分や昇進などの人事判断を行う以上、従業員の成果や行動を何らかの形で評価することは避けられません。
仮に正式な評価制度をなくしたとしても、人に対する比較や判断そのものがなくなるわけではありません。
むしろ、それらが水面下で行われることで、評価の不透明さや従業員の不満が増える可能性もあります。
問題は、「評価すること」そのものではありません。
評価制度だけで、人のパフォーマンスを高めようとしていることにあるのではないでしょうか。
「評価制度」と「パフォーマンスマネジメント」は違う
日本では、「パフォーマンスマネジメント」という言葉を「評価制度」と同じような意味で使うことがあります。
しかし、本来この二つは同じものではありません。
評価制度は、一定期間の成果や行動を振り返り、評価するための仕組みです。
一方、パフォーマンスマネジメントは、もっと広い概念です。
目標を設定する。 期待する成果を明確にする。 日々の仕事について対話する。 フィードバックする。 必要な支援をする。 成長を促す。 そして、その結果を評価する。
こうした一連のプロセスを通じて、従業員がより高いパフォーマンスを発揮できる状態をつくることが、パフォーマンスマネジメントです。
つまり、「評価」はパフォーマンスマネジメントの一部にすぎません。
なぜ、従来型の評価制度だけでは機能しないのか
Deloitteなどの調査を見ると、現在のパフォーマンスマネジメントには、いくつかの共通した課題があります。
1. 時間とコストがかかりすぎる
評価業務による労働時間の損失は、企業によって年間数百万〜数千万ドル規模に及ぶという試算もあります。
評価シートを埋め、コメントを書き、評価会議を行う。
多くの時間を使っているにもかかわらず、それが本当に従業員のパフォーマンス向上につながっているのかという疑問が残ります。
2. フィードバックが日々の仕事と乖離している
日常では十分なフィードバックが行われず、年末になって突然評価を伝えられる。
これでは、従業員の成長や行動改善につなげることは難しくなります。
問題が年次評価まで放置される状態そのものが、評価への信頼を損なう原因にもなります。
3. 期待値や目標が明確ではない
Gallupの調査では、「職場で自分に何を期待されているのかを明確に理解している」と強く回答した従業員は47%にとどまっています。
そもそも何を期待されているのかがわからない状態で、年末に「期待を下回った」と評価されても、納得感は生まれません。
4. 成果の「価値」を正しく測れていない
Deloitteの調査では、75%の企業が、個人が生み出した価値を正確に評価する能力について「十分に効果的ではない」と回答しています。
仕事の「量」は測れても、その仕事が組織にもたらした「価値」「質」「影響」まで捉えることは簡単ではありません。
「評価する仕組み」から「成果を生み出す仕組み」へ
では、どうすればよいのでしょうか。
重要なのは、評価項目を増やしたり、評価シートをさらに精緻にしたりすることではありません。
日常の仕事の中で、従業員が高いパフォーマンスを発揮できる仕組みをつくることです。
そのためには、次のような視点が重要になります。
1. 期待する成果を明確にする
特にリモート・ハイブリッド環境では、出社時間や「忙しそうに働いている」といった目に見える働き方ではなく、
「何を期待されているのか」
「どのような成果を出すのか」
「何をもって成功とするのか」
を明確にする必要があります。
2. フィードバックを日常化する
良かったことはタイムリーに伝え、強みをさらに伸ばす。
改善が必要なことも早い段階で伝え、軌道修正する。
フィードバックを「年に一度のイベント」ではなく、「日常のマネジメント」にしていくことが重要です。
3. 年次評価だけに頼らない
年次評価に加えて、四半期ごとのチェックイン、目標の進捗確認、1on1、プロジェクト終了時の振り返りなどを組み合わせることで、変化に対応しやすくなります。
Adobeは、従来型の年次評価から「Check-in」と呼ばれる継続的な対話型の仕組みへと移行しました。
目標や期待値について継続的に話し合い、フィードバックやキャリアについて定期的に対話する。
評価を「年に一度、人に点数をつけるイベント」ではなく、日々のマネジメントの一部として捉えているのです。
評価制度は必要。でも、それだけでは足りない
評価制度は必要です。
しかし、年に一度、従業員を評価するだけでは、人のパフォーマンスは高まりません。
大切なのは、
何を期待されているのか。 何が評価されるのか。 今、自分はどこまでできているのか。 これからどう成長していけばよいのか。
従業員がそれを日常的に理解できている状態をつくることです。
つまり、これから考えるべきなのは、
「評価制度をどう改善するか」だけではなく、 「パフォーマンスマネジメントをどう機能させるか」
ではないでしょうか。
評価制度を「人に点数をつける仕組み」から、「人と組織がより良い成果を生み出すための仕組み」へ。
2027年を迎える前に、
「今年の評価をどう実施するか」
だけではなく、
「この仕組みを通じて、私たちは何を実現したいのか?」
を改めて問い直してみてはいかがでしょうか。
<参考>
Reinventing performance management processes won’t unlock human performance. Here’s what will.
Is the Annual Performance Review Dead?
https://www.shrm.org/topics-tools/news/employee-relations/annual-performance-review-dead
How Adobe continues to inspire great performance and support career growth
https://www.adobe.com/check-in.html


