2027年1月1日から、カリフォルニア州の最低賃金が、現在の時給16.90ドルから17.40ドルへ引き上げられます。

州最低賃金は、2025年の16.50ドル、2026年の16.90ドルに続き、2027年も引き続き引き上げられることになります。長期的に見ると、2016年の時給10ドルから、2027年には17.40ドルへ上昇します。11年間で7.40ドル、率にして74%の上昇です。

なぜ、カリフォルニア州の最低賃金は毎年のように上がり続けるのでしょうか。

理由は、単に「カリフォルニアは生活費が高いから」というだけではありません。現在の州法には、物価の上昇に合わせて最低賃金を自動的に調整する仕組みが組み込まれているからです。

カリフォルニア最低賃金の歴史

カリフォルニア州の最低賃金制度は、1916年の時給16セントから始まりました。

その後、1957年に1ドル、1988年に4.25ドル、2008年に8ドル、2016年には10ドルへと、段階的に引き上げられてきました。

近年の推移は、次のとおりです。

2016年:10.00ドル
2017年:10.00ドルまたは10.50ドル
2018年:10.50ドルまたは11.00ドル
2019年:11.00ドルまたは12.00ドル
2020年:12.00ドルまたは13.00ドル
2021年:13.00ドルまたは14.00ドル
2022年:14.00ドルまたは15.00ドル
2023年:15.50ドル
2024年:16.00ドル
2025年:16.50ドル
2026年:16.90ドル
2027年:17.40ドル

2017年から2022年までは、従業員25人以下の企業と、26人以上の企業で異なる最低賃金が設定されていました。上記の各年で二つの金額が記載されている場合、低い方が従業員25人以下、高い方が26人以上の企業に適用された金額です。

2023年以降は企業規模による違いがなくなり、原則としてすべての企業に同じ州最低賃金が適用されています。

なお、一定のファストフード従業員や医療従事者などには、州の一般的な最低賃金とは異なる業種別の最低賃金が適用される場合があります。

転換点となった「時給15ドル」

最低賃金の上昇が加速した大きな転換点は、2016年に制定されたSB 3です。
この法律により、カリフォルニア州は、企業規模に応じたスケジュールで州最低賃金を段階的に時給15ドルまで引き上げることを決めました。

従業員26人以上の企業では、2022年に時給15ドルへ到達しました。従業員25人以下の企業についても、2022年のインフレ率が7%を超えたため、2023年には物価調整を含む時給15.50ドルが適用されました。

そして、段階的な引き上げが完了した後は、物価に連動して最低賃金を毎年調整する制度へ移行しました。

なぜ毎年上がるのか

カリフォルニア州労働法では、全米の都市部の賃金労働者および事務職労働者を対象とする消費者物価指数「CPI-W」に基づいて、翌年の最低賃金を調整すると定められています。

引き上げ率は、次のうち低い方です。

・CPI-Wの年間上昇率
・3.5%

計算結果は10セント単位に丸められ、翌年1月1日から適用されます。

また、CPI-Wの変化率がマイナスになった場合でも、最低賃金は引き下げられません。その年は据え置きとなります。

つまり、カリフォルニア州では、州議会が毎年新しい最低賃金法を制定しているわけではありません。 州法に組み込まれた物価連動の仕組みにより、インフレが続けば、最低賃金も原則として自動的に上がる制度になっているのです。

2027年の時給17.40ドルへの引き上げについても、州政府は、カリフォルニア州法に基づく自動的な物価調整であると説明しています。

なぜ物価に連動させるのか

賃金額が変わらなくても、家賃や食料品、光熱費、交通費などが上がれば、労働者が同じ賃金で購入できる商品やサービスは少なくなります。

最低賃金を物価に連動させる目的は、インフレによって労働者の購買力が大きく低下することを防ぐことにあります。特にカリフォルニア州では地域によって生活コストが大きく異なり、州最低賃金だけでは地域の実情に追いつかない場合があります。

そのため、サンフランシスコ、サンノゼ、ロサンゼルスなど、多くの市や郡が、州より高い独自の最低賃金を定めています。州、連邦、地域の最低賃金がそれぞれ異なる場合、雇用主は、原則として従業員にとって最も有利な基準を適用する必要があります。

企業は、従業員の居住地だけではなく、従業員が実際に勤務する市や郡に独自の最低賃金条例があるかを確認することが重要です。

最低賃金だけを変更すればよいわけではない

最低賃金の引き上げは、最低賃金付近で働く従業員だけに影響するものではありません。

例えば、経験の浅い従業員の賃金が最低賃金の引き上げによって上昇すると、経験や責任のある従業員との賃金差が縮まることがあります。

このような状態は、一般的に「賃金圧縮」と呼ばれます。

最低賃金を下回らないようにするだけでは、経験、職責、スキル、成果に応じた社内の賃金バランスが崩れてしまう可能性があります。

企業には、法令上の最低額を確認するだけでなく、組織全体の給与水準や賃金差が適切かを見直すことも求められます。

Exempt従業員にも影響する

カリフォルニア州では、一般的なExecutive、Administrative、Professional Exemptionの対象として従業員を扱うための最低給与基準が、州最低賃金に連動しています。

これらのExemptionでは、原則として、州最低賃金の2倍以上に相当する月給を、固定給として支払う必要があります。ここでいうフルタイム雇用は、週40時間と定義されています。

2027年の州最低賃金が時給17.40ドルとなるため、一般的な最低年俸基準は次のようになります。

17.40ドル × 2 × 2,080時間(40時間 × 52週) = 年間72,384ドル (月額 6,032ドル)

ただし、給与額を満たすだけでExemptとして扱えるわけではありません。

Executive、Administrative、Professionalの各Exemptionについて定められた職務内容、裁量権、独立した判断、マネジメント責任などの要件も満たす必要があります。

また、Computer Software Employee、Licensed Physician、Commissioned Employeeなど、一部のExemptionには異なる給与・報酬基準が設けられています。

したがって、72,384ドルという基準が、すべてのExempt従業員に一律に適用されるわけではない点には注意が必要です。

企業が2027年に向けて確認すべきこと

企業は、少なくとも次の項目を確認する必要があります。

  • 一般のNon-Exempt従業員の時給が17.40ドル以上になっているか
  • ファストフードや医療など、業種別最低賃金の対象ではないか
  • 従業員が勤務する市や郡に、州より高い最低賃金がないか
  • 一般的なExecutive、Administrative、Professional Exemptionの従業員が、年72,384ドル以上の給与基準を満たしているか
  • 給与基準だけでなく、各Exemptionの職務要件を満たしているか
  • 最低賃金の上昇によって既存社員との賃金差が縮まり、社内の給与バランスが崩れていないか
  • 求人票やオファーレターに記載する給与レンジを見直す必要がないか
  • 2027年の給与予算や人員計画に影響がないか
  • 最新のMinimum Wage Orderおよび事業に該当するWage Orderが適切に掲示されているか

複数の都市に従業員がいる企業や、リモートワーカーを雇用している企業は、従業員が実際に勤務する場所ごとに適用される最低賃金を確認することが重要です。

地域によっては、その地域内で勤務した時間数などによって条例の適用条件が定められていることもあるため、各自治体の条例も個別に確認する必要があります。

最低賃金の上昇を、給与制度を見直す機会に

カリフォルニア州の最低賃金が上がり続けるのは、毎年個別の政治判断だけで金額が決められているからではありません。

時給15ドルへの段階的な引き上げと、その後の物価連動制度によって、最低賃金の上昇が仕組み化されているためです。最低賃金が上がれば、一般的なExempt従業員の最低給与基準や、既存社員間の賃金差、採用時の給与レンジにも影響します。

企業に求められるのは、最低賃金を下回らないように給与システムを変更することだけではありません。 2027年の給与計画を立てる際には、最低賃金の引き上げを、組織全体の給与体系を見直す機会として捉えることが重要です。


<参考>

State of California, Governor’s Office
“Governor Newsom announces California will raise statewide minimum wage”
https://www.gov.ca.gov/2026/07/31/governor-newsom-announces-california-will-raise-statewide-minimum-wage/

California Department of Industrial Relations
“History of California Minimum Wage”
https://www.dir.ca.gov/iwc/minimumwagehistory.htm

California Department of Industrial Relations
“Minimum Wage Frequently Asked Questions”
https://www.dir.ca.gov/dlse/FAQ_MinimumWage.htm

California Legislative Information
“California Labor Code Section 1182.12”
https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/codes_displaySection.xhtml?lawCode=LAB&sectionNum=1182.12.

California Department of Industrial Relations
“Minimum Wage”
https://www.dir.ca.gov/dlse/minimum_wage.htm

California Department of Industrial Relations
“California Code of Regulations, Title 8, Section 11040”
https://www.dir.ca.gov/t8/11040.html