アメリカへの出張は日系企業にとって珍しいことではありませんが、渡航目的に合ったビザの選択を誤ると、思わぬトラブルにつながることがあります。
ジョージア州での大規模摘発
2025年9月、アメリカ・ジョージア州にある韓国自動車メーカーHyundaiと韓国電池大手LGエナジーソリューション(LGES)合弁バッテリー工場建設現場で、移民・関税執行局(ICE)が大規模な摘発(Raid)を実施。不法滞在・不法就労で475人が拘束されました。
ジョージア州サヴァンナのICE事務所は、「拘束された人たちは査証(ビザ)や入国資格の条件に違反し、就労していたことが発覚した」、「短期あるいは観光用のビザで入国している人は、アメリカで就労する資格がない」と明言。
労働者の就労資格やビザの適切性が焦点となり、改めて、「ビザ区分の理解不足=企業リスク」が浮き彫りになりました。
ESTAとBビザの違い
ESTA(電子渡航認証システム)
- 90日まで滞在が可能。
- 主な用途は観光、会議参加、商談などの軽いビジネス活動。
- 「就労」とみなされるような行為は不可。
Bビザ
- B-1(商用):会議、契約交渉、研修など
- B-2(観光):観光、親族訪問、治療など
よく話題に上るのが 「B-1 in lieu of H-1B」 です。これは、短期の専門業務出張を目的とする場合に限り、H-1Bビザ(専門職就労ビザ)の代替としてB-1ビザを利用できます。
なお、「B-1 in lieu of H-1B」は慣行的・判例や法律実務で使われているもので、法令あるいは規則(statute / code)や政府のマニュアルにおいて、正式な制度名として明文化されてはいません。入国審査官の判断が厳しく、活動内容によっては「就労」と見なされ入国を拒否されるリスクもあります。
出張準備は「余裕を持って慎重に
企業としては、以下をあらかじめ整理しておくことが大切です。
- 「どの活動がESTAで良いのか」
- 「どの活動はB-1が必要なのか」
- 「B-1 in lieu of H-1Bを検討すべきか」
その上で、以下を習慣にしておくと安心です。
- 渡航前に社内で確認フローを作っておくこと
- 招聘状や出張の目的を明確にしておくこと
- 必要であれば専門家の意見を聞くこと
最新動向:H-1Bビザの申請料が大幅引き上げに
短期滞在ビザとは異なりますが、大きなビザ政策変更が報じられました。
トランプ政権は、H-1Bビザの新規申請に対して1件あたり10万ドルの申請料を課す大統領令を発表しました。
- 対象は 新規申請 であり、既存のH-1B保有者や更新手続きには現時点では適用されないとされています。背景には「米国人労働者の保護」と「プログラム乱用の防止」があり、とくにインドなどH-1B利用者の多い国や、IT・テック系企業に大きな影響が出ると見られています。
- ただし実務上の運用や法的整合性についてはまだ不透明な部分があり、企業の間でも混乱が広がっています。
ESTAやBビザは一見シンプルですが、活動内容によって適切な選択が変わり、誤ると入国拒否や企業への指摘につながるリスクがあります。
特に B-1 in lieu of H-1B の利用は便利な反面、慎重な判断が求められます。アメリカへの出張が多い企業にとっては、渡航準備を「手軽さ」だけで進めるのではなく、「安心・安全」を重視して計画していくことが大切です。
<参考>
Georgia ICE Raid Netted Workers With Short-Term Business Visas
https://www.nytimes.com/2025/09/12/business/economy/hyundai-raid-worker-visas.html
Trump imposes $100K fee on H-1B visas in new immigration action
https://www.cnn.com/2025/09/19/politics/trump-h1b-visa-fee
U.S Visas
https://travel.state.gov/content/travel/en/us-visas/business.html


