アクティブリスニングで「本音を話せる職場」をつくる

「心理的安全性」という言葉が広まり、多くの企業で1on1ミーティングや管理職研修などの取り組みが進められています。

しかし、制度を導入しただけで社員が安心して本音を話せるようになるわけではありません。

社内コミュニケーション支援を手掛けるIKUSAの調査では、心理的安全性を高める施策として最も多く選ばれたのは「日頃の雑談」(45.0%)でした。

一方、多くの企業が導入している「1on1」は23.3%にとどまり、社員は制度よりも日常的なコミュニケーションの方が安心感につながると感じていることが分かりました。

また、約3割の社員が「職場で本音を言いにくい」と回答しており、特に「ミスや失敗を報告するとき」や「反対意見を伝えるとき」に心理的な壁を感じています。

つまり、制度があっても、「安心して話せる関係性」がなければ、本音は引き出せないということです。

さらに、理想のリーダー像としては、「チームワーク重視型」や「伴走型」が「指示型」を上回る結果となりました。

決断力に加え、公平性やコーチング力など、メンバーを支えながら信頼関係を築く姿勢がこれまで以上に求められています。

こうした調査結果から見えてくるのは、心理的安全性を高める鍵は制度ではなく、リーダーの日々のコミュニケーションにあるということです。

「聞く」ではなく「聴く」ことが重要

では、リーダーはどのようなコミュニケーションを心掛ければよいのでしょうか。

そのヒントとなるのがアクティブリスニング(Active Listening:積極的傾聴)です。

アクティブリスニングとは、単に相手の話を最後まで聞くことではありません。

相手の考えや感情を理解しようと努め、その内容を踏まえて行動につなげるコミュニケーションです。

社員は「話した」だけでは満足しません。

「理解してもらえた」「行動してもらえた」と感じて初めて、信頼が生まれます。

アクティブリスニングの5つのステップ

1. 言葉になっていないサインに気付く

社員が発する言葉だけでなく、「言えていないこと」にも目を向けます。

例えば、

  • 最近発言が減った
  • 表情が暗い
  • 会議で急に静かになった

こうした変化は、不安や不満のサインかもしれません。

2. 理解するために質問する

違和感を感じたら、評価や結論を急がず、オープンクエスチョンで背景を確認します。

例えば、

  • 「どう感じていますか?」
  • 「何か気になることがありますか?」
  • 「もう少し詳しく教えてもらえますか?」

などです。

相手を理解しようとする姿勢そのものが、「この人には話しても大丈夫」という安心感につながります。

3. すぐに答えを出さず一度立ち止まる

相談を受けると、リーダーはすぐに解決策を提示したくなります。

しかし、本当に必要なのは、一度立ち止まって整理することです。

「少し確認してから回答します」という一言が、結果としてより適切な判断につながります。

4. 一緒に解決策を考える

リーダーが答えを与えるのではなく、「どうすれば改善できそうですか?」と問い掛けながら、本人も交えて解決策を考えます。

伴走型リーダーシップとは、こうした対話を重ねることでもあります。

5. 必ず結果を伝える(Close the Loop)

最も重要でありながら、最も忘れられやすいのがこのステップです。

社員から意見を聞いた後、

  • 何を検討したのか
  • 何を実施するのか
  • 実施できない理由は何か

を必ず本人へ伝えます。

このフォローアップによって、「話を聞いて終わり」ではなく、「本当に受け止めてもらえた」という実感が生まれます。

「雑談」が心理的安全性を高める理由

IKUSAの調査で「雑談」が最も高く評価されたのは偶然ではありません。

雑談には、

  • 相手を知る
  • 表情や声色の変化に気付く
  • 困り事を早期に察知する
  • 気軽に相談できる関係をつくる

という役割があります。

1on1は月に1回でも、雑談は毎日できます。

だからこそ、日々の何気ない会話の積み重ねが、失敗や反対意見も安心して話せる関係性につながるのです。

リーダーが今日から実践できるコミュニケーション

心理的安全性を高めるために、特別な制度や新しい仕組みが必要とは限りません。

まずは、日々の対話の中で次のことを意識してみるのはどうでしょうか。

  • 相手の話を途中で遮らない。
  • 話の内容だけでなく、表情や声のトーンなど非言語のサインにも目を向ける。
  • 「どう思う?」「他に気になることはある?」といったオープンクエスチョンで考えを引き出す。
  • すぐに結論を出さず、一度立ち止まって考える。
  • 話を聞いた後は、対応状況や結果を必ず本人へ伝える。

こうした小さな積み重ねが、「この職場では安心して話せる」という感覚を育てていきます。

おわりに

心理的安全性は、制度を整えれば自然に生まれるものではありません。

社員が本音を話せるかどうかは、リーダーが日頃どのように耳を傾け、どのように応えるかに大きく左右されます。

社員が求めているのは形式的な面談よりも、「普段から気軽に話せる関係性」です。

そして、その関係性を築くための実践的な手法がアクティブリスニングです。

リーダーが「聞く」から「理解するために聴く」へと姿勢を変え、さらに受け取った声を行動につなげ、その結果を伝える。

この一連のプロセスを実践することが、心理的安全性の高い職場づくりへの第一歩となるでしょう。


<参考>

1on1より雑談が効果的 心理的安全性を高めるコミュニケーション
https://forbesjapan.com/articles/detail/100124/page2

アクティブリスニングとは? 効果、4つの手法、鍛え方を簡単に
https://www.kaonavi.jp/dictionary/active-listening/